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「日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用」HRTechブームの現在、非常に参考になる本

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用

手に取ったきっかけ

nakamichi @__nakamichi__
AI人事とか胡乱なこと言わずにこれ読んだ方がいいですよ的な. / 日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用 | 大湾 秀雄  http://ow.ly/MLzn30d7F1D
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経済学者による因果推論の一般向け本のひとつだけど,著者が実際に企業と人事データ活用研究会みたいなのをやった経験がベースになっているので,こういうことを調べたいときはこれを目的変数にしてあの変数をコントロールして回帰分析する,というような実践的な話が色々載っているのがおもしろい.
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「なぜ人事ではデータ活用が遅れているのでしょうか.まず言えることは,人事部に配属される人は,文系が多く,そもそも統計リテラシーが低いという現状があります.伝統的に人事の課題を扱う研究は『人的資源管理論』が主流でした.しかし,この分野の研究者も,定性的な分析に終始してきたため,

このあたりのTwitterを見て、この本の存在を知りました。なかなか挑戦的な感じがしたし、これはよい本だろうと、ポチッとしました。データサイエンスやHRTechのブームの今においても、なかなかデータ分析×人事データの書籍が出てきてはいないので貴重な本だと思いました。

感想

企業内データ計量分析プロジェクトでの研究成果がまとめられていて、とても良い本でした。採用/中間管理職の問題/ダイバーシティなど人事課題をどうデータ分析で扱っていくのか?という流れで描かれていて良かったです。

データ分析一辺倒でもなく、単なる組織論だけでなく、実際の人事課題をどうデータ分析で解決していくのか?という実際の現場で使えそうな感じで、バランス感がとてもよく、こういう本を望んでいた感じでした。

人事データはセンシティブデータと言われて、なかなかデータ分析が進まなかったり(個人的には病歴などを除いた人事評価などの人事データはセンシティブデータだとは思っていないのですが・・・)、データ分析できる人が人事部にいなくてデータ分析が進まなかったり、諸々の実際の権限が人事部にないからデータ分析が進まなかったり・・・。

人事データ分析が進まない理由は様々あると思うけれど、こういう本や論文がもっと広まって、人事データ分析が当たり前の世の中になるといいなと思う。実際、この本の中に出てくる分析例をそのまま自社に適応するだけでも、何かが得られると思うので、この本を片手に自社の人事データ分析を進める人が増えてほしい。

そして、回帰分析の強力さを改めて再認識。最近、DeepLearningが流行って、なんでもDeepLearningやっとけばいい空気があるけれども、回帰分析だけでも、使いどころを見極めて正しく使えば、ある程度十分戦えるなと改めて思った。現在のデータ分析の80%ぐらいは可視化と回帰分析でなんとかなるのではないかなと。

「10年後、生き残る理系の条件」を読んで、キャリアパスを考える

10年後、生き残る理系の条件

10年後、生き残る理系の条件

なぜ手に取ったのか?

遅ればせながら、10年後、生き残る理系の条件を読んだ。最近、今後の身の振り方含め、キャリアパスに対してモヤモヤとしている部分が多くあったので、積読の中から引っ張って読んでみた。

どんな本だったか

現在、中央大学の教授をなさっている竹内(@kentakeuchi2003)さんが、東芝MBA留学→大学教授とキャリアを重ねている経験から、理系(エンジニア)が今後どう生き残っていくか?の生存戦略の心構えを説いている本。

実際に体験されていることであったり、日々の中で感じられていることがベースにあるので、非常に具体的でわかりやすく、すっと頭に入ってきた。「なるほどな」と思わされることが多くて、自分も今後どうするのか?ということを考えるのに非常に良い本だったと思う。若い頃にこそ、この本を読むべきだなぁと思いました。

感想

  • 会社と個人の関係性の変化
  • 自分の強みの見つけ方
  • 移り変わりが早いIT業界での振る舞い方
  • 自分の専門ではない異分野との関わりの重要性

そんな感じの部分がとても個人的には参考になりました。 私は1つの技術だけで食っていける程の本当の専門スキルを持っている訳ではないので、コツコツ毎日意識行動+たまにキャリアを振り返りで、良いキャリアを築いていければいいなぁと思います。

Google IO 2017のKeynoteを見て思った事

youtu.be

Google IOのKeynoteを見た。 Google Home / Google Lens/ Google photo book/ Visual Positioning Service / Kotlinあたりで私も観客と一緒に「おーっ」となった。

iPhoneからAndroidに乗り換えようかなと思うぐらいワクワクさせられた。

ちょっと長ったけど・・・w

どのサービスにも機械学習がベースにあって、機械学習によって基本能力が上がっている感じ。

機械学習の使い方も上手い。ユーザのデータが集まったから機械学習しました系の新機能も多かった。

インターネットが登場して世界が変わった時のように、機械学習が進化して世界が変わってきている感を強く感じた。

その機械学習などがソフトウェア企業のGoogleの強みであるし、魅力になっているのは間違いないけれど、機械学習一辺倒なのも少しどうなのかな?とも思った。サービスの新機能を考える上で、「まっさらからユーザのニーズを考えて新機能を作る」のではなく、「ユーザデータを取ってきて機械学習して新機能を作ればいいのでは?」と安易な流れだけには行かないでほしいなーと(個人的な感想)

気になったサービスを2つ

Google Lens

japanese.engadget.com

撮った写真の建物なんだっけ?とか、店のホームページのスクショからtelかけるとかできる。こういうの欲しかった。自分自身WiFiのID/PASSをメモ代わりに写真撮っておくっていう事をよくするので、google LensのユースケースとしてもあのWiFiの例は良かったと思う。

そして、google LensとGoogle photoが連携するのも、さすが。よくわかっている。

Google Photo Books

www.google.com

日本展開がされないから、どのメディアも取り上げないから、あまり注目されてないけど、個人的にはこれが一番「来たかー」感があった発表。

  1. Google photoで気兼ねなく写真を撮ってUPする
  2. → どれがいい写真かよくわからん。写真がたくさんだから、選別も辛い。
  3. Google機械学習で選んであげるよ!

っていうすごく解りやすい流れだし、ソフトウェア以外にも乗り出して一貫サービスをするというのが新しいと思う。Google photoの写真をいい感じに画像処理する機能も入ってきたら、ユーザはただ撮るだけで、いい感じのPhotoBookが送られてくるという凄いサービスが出来上がると思うのです。

「原因と結果」の経済学 ―データから真実を見抜く思考法を読んだ。データと向き合う考え方を教えてもらえる気がする良書。

なぜこの本を手に取ったのか?

2−3年前から因果推論が流行の兆しを見せていて、ずーっと勉強しようとは思っていたが、踏み出せずにいたところに、岩波データサイエンス Vol.3(特集:因果推論)が発売され、因果推論ってこんな感じなんだーと思ったところに、この本が発売されたので読むしかないでしょと。

どんな本だったのか?

今年読んだ本の中で、ベスト5には入るすごく良い本だった。

ランダム化比較試験、差の差分析、回帰不連続デザイン、プロペンシティ・スコア・マッチング(傾向スコア)、回帰分析などなど・・・。因果分析のやり方の概念を具体例を交えながら、分かりやすく説明していた本だった。

概念・考え方に限定し、数式やコードなどは出てこないので、この本だけでは実際に因果統計分析をやろうと思ってもすぐに実践することはできない。けれど、考え方を知っているだけで、誤った解釈を防げたり、データ集めの方針を決めたりする時に参考になる。「入門の入門」にはもってこいだと思う。

因果推論は、 社会心理学会 第3回春の方法論セミナーに参加したり、岩波データサイエンス Vol.3(特集:因果推論)を読んだぐらいで、まだ全然勉強できていないが、俯瞰して分析方法や概念を知れたのは、とてもよかった。

雑多な感想

  • 「おぉ、こんな感じでデータを扱えば因果の方向の考察ができるのか?」という感覚は、大学時代に初めて実験計画法を教わったときのような感覚だった。

  • 現在のビッグデータ時代、データが手に入れやすくなって、データドリブンな判断がされているが・・・。得られた結果は、相関なのか?因果なのか?因果の方向はどっち向きなのか?はたまた、偶然なのか?このあたりのデータを解釈する上でのデータリテラシーは、データに携わる人々は皆が抑えておくべき必須知識だと思う。

  • 因果推論と言っても、唯一無二の方法があるというわけでなく、得られるデータや使い方によって色々な方法を使いこなさないといけない。それぞれの分析方法の前提条件や分析方法のエビデンスの高さなど、分析手法間の違いも、なんとく把握できた。岩波データサイエンス Vol.3(特集:因果推論)を読んだ時には、そこまで理解できていなかったので、とても助かった。

  • 空前のDeepLearningブーム・機械学習ブームの中、「データを大量に集めてDNNにかけたら、なんか知らないけど予測が高精度に出来て良かった!」というのも一つの解としてはアリだとは思う。けれど、統計モデリング派の私としては、その裏側の仕組みやモデリングを行って人間が理解できるようにするという思想は大事にしたいなと思っていて、そういう意味でも因果推論の話は学んでいきたいと思う。そして、最近、機械学習界隈でのDeepLearningに相当するものは、統計モデリング界隈では、因果推論かベイスモデリングMCMCとか)であって、この2つはブームが来程るのではないかと個人的には思っている。

イマイチまだわかっていないこと

教えていただきたい・・・。

  • SEM(構造方程式モデリング)との関係

    • SEMも中途半端な理解しか出来ていないけれども、因果推論の文脈でSEMをどう捉えればいいのかが、ピンとこない。
    • SEMも因子分析+回帰分析なので、やってることは、回帰分析の因果推論と同じ??
  • GoogleCausalImpactというRのパッケージは、因果推論の文脈でいうと何をしているのか?

    • 時系列データから、反事実を推定して穴埋めし、それと実際のデータを比較しているという理解でいいのだろうか・・・。

次は・・・?

この本の著者の津川先生が↓ とおっしゃっているので、

データ分析の力 因果関係に迫る思考法を読もうかと思います

職場の人間科学を読んだ

職場の人間科学: ビッグデータで考える「理想の働き方」

職場の人間科学: ビッグデータで考える「理想の働き方」

きっかけ

最近、HR Techやピープルアナリティクスに興味があって、体系的に書かれた本ないかなーと思って、そういう本を探していて、題名ズバリだし、評価もそこそこだし、勉強しようと思って読んだ。

どんな本だったか?

組織の進化的・歴史的背景知識+データの見えざる手に描かれているような、社員証にセンサーをつけて、コミュニケーションパスを分析して考えてみたという2本立ての内容でした。2013年に書かれた本としては、先進的だったのかな??

感想

  • オプトインや透明性の話、実験参加していない人に対してもダミーのセンサーを配る、ホーソン効果などの話・・・。職場で実験や調査をするときに気をつけないといけないことに言及されていてよかった
  • お互いのことを知ることができる上限の数:ダンバー数
  • 社会ネットワーク分析とかは、分析手法としてRの{igraph}とかを使って触ったことはあるけれど、コミュニケーションとして考えた時に、生産性と社会ネットワーク分析がどう関係していくのか?というのは面白かった
    • 凝集性と多様性というキーワードは覚えておきたい
  • 今、働き方改革などで、リモートワークが推進されているけれども、そうなった時の測定ってどうすればいいんだろうか。数年後、より戻しで、オフィス集中がいいとかなるのだろうか。
  • 直接コミュニケーションによって得られるプラスのメリットをうまく特定できれば、リモートワークでもリアルコミュニケーションと同等の力を発揮できるんだろうか。

「Joy,Inc. 役職も部署もない全員主役のマネジメント」 を読んだ

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

周りの人が読んでよかったと言っていたので、読んでみた。読み初めは、「タイトルのJoyってなんだろうなー・・・」って半信半疑で読んでいたが、冒頭のこのフレーズが刺さった。

なぜ喜びをあえて取り上げる必要があるのだろう?

(・・中略・・)

チームのうち、半分が喜びを持っていて、半分が喜びを持っていないとしたら、あなたの理想のプロジェクトにはどちらの人を入れたいと思いますか??

喜びとか、そういうものは、なぜか知らないけど、仕事の上では、その価値が低く見られがちだけども、

「喜びがあるチームだから、生産性が高そう」

「喜びがあるチームだから、一緒に働きやすそう」

・・・というように、生産性や働きやすさの土台・1つ上の概念として考えてもいいようなことなんだなと。

考えて改善していくことの大事さ

この本で、XP、スクラム、ラーニングランチ、カンバンなど、メンロー・イノベーション社の色々な取り組みが紹介されていたけれども、その取り組み自体を参考にするというのも、良さそうだけれども、多分本質は「良い方向に向くように考えて、実験して、常に改善していく。そして、それを行える土壌を作っている。」ということなんだろうなと思った。

「喜び」をメインテーマにして、いろんな実験をして、改善していった結果が、本に載っていることなんだろう。

小さなチーム、大きな仕事: 37シグナルズ成功の法則 を読んだ

小さなチーム、大きな仕事――働き方の新スタンダード (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

小さなチーム、大きな仕事――働き方の新スタンダード (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: ジェイソンフリード,デイヴィッドハイネマイヤーハンソン,黒沢健二,松永肇一,美谷広海,祐佳ヤング
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/12/08
  • メディア: 文庫
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どんな本か?

37signalsが取り組んできた働き方・ビジネスの考え方が描かれている本。

前々から気になっていたけども、今回手に取ったきっかけは、SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアルで触れられていたから。あっさり読めるし、読んでよかった。

感想

リーンスタートアップのような考え方がベースにあるように思った。「小さなチーム」というのがあるけれど、小さなチームでなくても、参考になることはたくさんあるし、むしろ今後は大企業でもこう言った考えを持っていないと生き残れないように思っている。

この辺のところは特に印象に残った。

  • 制約を受け入れる
  • 芯から作る
  • 競争相手以下のことしかしない
  • 顧客の声を書き留めてはいけない
  • 競合相手に教える

中でも、「競争相手以下のことしかしない」は、一番印象に残った。 製品開発、新規事業などなどをお手伝いすることがあるけれど、どうしても他社・他社製品よりもより多機能・高機能というところに目が行きがちになってしまう傾向にあると思うので、「なるべく小さく、なるべく無駄をそぎ落とす」とういうことは意識していきたい。

あと、この本の日本語版の初版が2010年(おそらく)というのにも驚いた。 リーンスタートアップの日本語の初版が2012年(おそらく)でそれよりも前だし、2010年の段階でこんな考え方をしていたのはすごいなぁと心から思った。