どらちゃんのポッケ

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ダイバーシティについて思うこと

最近、企業でダイバーシティ推進ということをよく聞く。その動き自体は大変素晴らしいことだと思うけれど、 日々の生活の中で入ってくる報道や各社の取り組みの第一印象が「女性の活躍を推進すること=ダイバシティ」となっているように思い、違和感を覚えている。その違和感を出発として、ダイバーシティについて悶々と書いてみる。

<但し書>
経営者でもなければ、ダイバーシティの専門家でもなければ、何でもないただのITエンジニアが調べたもの
です。間違え等がありましたら、ご指摘ください。

ダイバーシティって何だっけ?

経済産業省平成 27 年度 新・ダイバーシティ経営企業100選ベストプラクティス集ダイバーシティ経営とはの定義や目的・効果に付いて書いてあった。(※この平成 27 年度 新・ダイバーシティ経営企業100選ベストプラクティス集はとてもいい資料だったので、一読をお勧めします)

ダイバーシティ経営とは

平成 27 年度 新・ダイバーシティ経営企業100選ベストプラクティス集 のP1から引用

ダイバーシティ経営」とは 「多様な人材(注1) を活かし、その能力(注 2) が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値 創造につなげている経営(注 3) 」のことです。 これからの日本企業が競争力を高めていくために、必要かつ有効な戦略といえます。

(注 1)「多様な人材」とは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性も含みます。

(注 2)「能力」には、多様な人材それぞれの持つ潜在的な能力や特性なども含みます。

(注 3)「イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」とは、組織内の個々の人材がその特性をいかし、いきいきと働くことの出来る環境 を整えることによって、「自由な発想」が生まれ、生産性を向上し、自社の競争力強化につながる、といった一連の流れを生み出しうる経営のこ とです。

なるほど、ダイバーシティ経営の取り組みは、1)色々な属性・趣味嗜好・働き方の人を採用し、2)マイノリティの人でも能力が発揮できるような公平正大な職場環境を準備し、3)最適配置をすることで、4)新しい価値を生み出していくという経営の姿勢なんだなと理解。

ダイバーシティ経営を推進しようとしている社会背景

平成 27 年度 新・ダイバーシティ経営企業100選ベストプラクティス集 のP1から引用

経済のグローバル化少子高齢化が進む中で、我が国の企業競争力の強化を図るためには、女性、外国人、 高齢者、チャレンジド(障がい者)を含め、一人ひとりが能力を発揮して、イノベーション、価値創造に 参画していくダイバーシティ経営の推進が必要です。

ここでまず、違和感。 文脈からだと、少子高齢化で労働人口が減少していくから、ダイバーシティ経営をしていかないといけないと読み取った。でも、誤解を恐れずに言うと、少子高齢化問題とダイバーシティ経営は直接関係がないことではないのかなぁ。少子高齢化でなくてもダイバーシティ経営は重要だと思う。現にアメリカでもダイバーシティについてはたくさん議論されている。

なので、正しくは、 少子高齢化で労働人口が減少していくから、ダイバーシティ経営をしていかないといけない ではなく、 少子高齢化で労働人口が減少していくから、必然的にダイバーシティ経営になる。なので、ダイバーシティ経営ができる準備をちゃんとしよう OR 少子高齢化で労働人口が減少していくから、ダイバーシティ経営によってより効率的・効果的に高付加価値の仕事ができるようにしよう ということではないかな?? (※ここでは、差別・偏見をなくすことや、障がい者の方も平等に働ける社会へのような、社会的な責務は一旦、置いておきます)

ここに、まずダイバーシティへの違和感の1つが隠れている気がした。

ダイバーシティ経営での企業側のメリット

平成 27 年度 新・ダイバーシティ経営企業100選ベストプラクティス集 のP3から引用

競争優位を構築するための経営戦略

 「ダイバーシティ経営」とは、「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」のことです。個々の企業が置かれた市場環境や技術構造の中で競争優位を築くために必要な人材活用戦略といえます。福利厚生や CSR(企業の社会的責任) としてではなく、あくまでも経営戦略の一環として、自社の競争力強化という目的意識を持って戦略的に進め ることが重要です。

なるほど。ダイバーシティ経営は、単純にCSRとして、やってますアピールだけでなく、ダイバーシティ経営によって明確に利益となる何かが生まれるように戦略的にやっていくものなのか。ここは、今までのイメージとは全然異なっているなと思った。単純にCSRだからしょうがなく、ダイバーシティ経営を推進している企業がほとんどであると思っていた。

企業側にもメリットがないと永続的に続いていく仕組みにはできないので、ダイバーシティ経営で、明確に利益を目指すというところは非常にいいことだと思った。しかし、この辺の「ダイバーシティで利益を出す」という部分はあまり語られない部分だと思った。なぜダイバーシティを推進するのかということが語られるときに「利益」という単語はほぼ出てこないように思っている。

例えば、google検索で引っかかった日本企業のダイバーシティについての取り組み適当に選んでみてみた。NTT DocomoさんJTBさんサントリーさんなどを見ても、利益については語られていない。

ダイバーシティ」というものは、CSRの一環で利益を狙ってはいけないものというイメージがあったり、労働者側の権利というイメージがあるせいなんだろうか。ここにも違和感の原因が隠れている気がする。

ダイバーシティ経営の成果

①プロダクトイノベーション:対価を得る製品・サービス自体を新たに開発したり、改良を加えたりするもの (多様な人材が異なる分野の知識、経験、価値観を持ち寄ることで、「新しい発想」が生まれます。)

②プロセスイノベーション: 製品・サービスを開発、製造、販売するための手段を新たに開発したり、改良を加えたりするもの(管 理部門の効率化を含む)(多様な人材が能力を発揮できる働き方を追求することで、効率性や創造性が高まります。)

③外的評価の向上:顧客満足度の向上、社会的認知度の向上など (多様な人材を活用していること、およびそこから生まれる成果によって、顧客や市場などからの評価 が高まります。)

④職場内の効果:社員のモチベーション向上や職場環境の改善など (自身の能力を発揮できる環境が整備されることでモチベーションが高まり、また、働きがいのある職 場に変化していきます。)

なるほど。やってみないとわからないことも多くありそうだけれども、うまくいけば、どれも実際に起こりそうなメリットではありそう。

ダイバーシティ経営の事例

  • 平成 27 年度 新・ダイバーシティ経営企業100選ベストプラクティス集に、国内事例は沢山載っていたので、その中で気になったものをいくつか
  • P31のダイワハウスさんの事例
    • 女性が少ない建築関係の仕事で、女性が働きやすい環境を作ったら、女性の担当が増え、アフター点検部門顧客満足度が上がった
  • P37の社真京精機さんの事例
    • 助成金に頼らず、障がいのある社員一人一人に対して徹底して向き合い、生産体制の安定化
    • 障がいのある社員を戦力として活用するための仕組み、治具の工夫が成功し業績が回復したことは社員のモチベーションの向上にもつながり、それまで不可能とあきらめていた試作品製作も行うように。
  • P73のニフティさんの事例
    • 在宅勤務や評価制度改革などにより、30代の女性社員が出産や育児により活躍の幅が制限されることのなく働ける環境が整い、生活者視点の導入したサービスを生み出している
  • 海外事例:pinterest
    • pinterestでは、ここの会社ブログにあるように、ITテクノロジー業界は、ダイバーシティが欠如していることを危惧し、社員の属性の比率を公開し、採用目標も設定・公開している。

思ったことをツラツラと

ダイバーシティを高めるために、必要なことってなんだろう?

この辺りのことが必要なのかな。

  • 多種多様な人が働けるような環境・制度
  • 多種多様な人を様々な基準で評価できるような評価制度
  • マイノリティの人でも会社の重要な仕事にチャレンジできる文化
  • ダイバーシティ推進で会社にどんなメリットをもたらすかの戦略とその共通認識
  • それを理解し実行できるようにするために、評価者/マネージャーの教育と役割の再設定
  • それらを意識して、ボトムアップ的に文化を少しずつ変えていく社員
  • それらを推進していくことができる経営層

ダイバーシティへの誤解

今回のブログエントリを書くにあたり、色々と調べる前は、日本では「女性登用をする=ダイバーシティを推進している」と思っている企業がほとんどなんじゃないかと勝手に誤解をしていたし、「ダイバーシティは利益を目指して行われるものではない」と思っていたり、働き方とダイバーシティの関係性についても整理できていなかった。 ダイバーシティの問題はとても難しいので、社で進めるときには「なぜ、どのようにしてダイバーシティを進めるのか」ということをきちんと説明しないと誤解が生まれてしまうなと思った。

ダイバーシティの計測可能性について

その会社のダイバーシティ推進が正しい方向に進んでいるのかどうかというのの計測も難しいんだなと思った。 ダイバーシティの測定可能な指標で公表可能なものは、社員の属性ぐらいしかないのだろう。なので、ダイバーシティの取り組みを広報するときに、男女などの社員の属性の割合がほとんどになってしまっているのであろう。

ダイバーシティの何か新しい基準が生まれるといいなと思う。

個に向き合う

この前、サイボウズ式のブログで、働き方の柔軟性について書かれた素晴らしいエントリーがあった。その中に一節にこんな文章がある。めっちゃいい。

そこから考え方を変えて、みんなモチベーションが違うんだったら、それを前提に人事制度を作り直そうと。副社長の山田と生み出したのが『100人いれば、100通りの人事制度があってよい』という、公平性より個性を重んじる考え方です。

このように1人1人の個に向き合うというのは覚悟がいるし、非常にコストがとてもかかるかもしれないが、それを補って余りあるメリットを生み出す可能性があると思い、真摯に向き合っていくのが大事なんだろうな。 こういう取り組みが、ダイバーシティの第一歩なような印象を受けた。

この辺のサイボウズが取り組んできた内容について、 チームのことだけ、考えた。という本に描かれているみたいなので、別途読んでみようと思う。

これまでの働き方は、組織の過学習状態・局所最適化だったのか??

高度経済成長期から現在まで、様々な経営・組織ノウハウが溜まって、最適化・合理化を進めてきたんだろうと思う。その中で、「xxxはダメだから使わない」「xxxはこっちの方がいい」というようになってしまっていて、機械学習用語で言うところの過学習状態・局所最適化になっていたのではないかとボンヤリと思った。

それを打ち破るものとして、「ダイバーシティ」というものがキーワードに成っているのではないかと思った

自分ができること

自分は組織の一員であって、経営者でもなければ、評価者でもない立場なので、トップダウン的に動かすのは不可能である。なので、自分ができることしては、「社外の取り組み事例を追いかけ勉強すること」と、 「同僚の間での“個”に向き合う文化・風習を浸透させて、ダイバーシティへの地ならしをしていくこと」かなぁ

結局、どうしたらいいんだろう・・・

ダイバーシティは、ダイバーシティのそのもの問題、その前提となってくる働き方・文化・採用の問題、少子高齢化による労働不足の問題、いくつかの問題が絡まって、本質が掴みにくいんだなと思った。そもそも働き方の問題や少子高齢化による労働不足の問題は、1つだけでも大きな1つの問題領域であるのに・・・。